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作品(穴)

嶋本 昭三

1950-52

無残に破れ傷ついた画面が眼前にある。何か手荒な力が加えられた表面は、亀裂や穴となり、画面の向こう側をのぞかせる。めくれた表面の下からは古新聞が顔を出し、穴からは重なった新聞の断層が見え隠れする。人の手によって作りだされた傷痕と、そこから生まれる表層と内層の複雑なマテイエールは、むしろ豊かな表現効果を生みだしている。
作家としてのスタートを切ったばかりの嶋本昭三は、当時経済的な理由から新聞紙を何枚も重ね、糊でかためた私製カンヴァスを使って絵を描いていた。ある時、その上を何度となく力を込めて鉛筆で線描を引くうちに、古新聞に鉛筆は突き刺さり、穴が偶然に生まれていたという。作家の激しい行為がそのまま凍結されたようなこの「穴」の連作に、厳しい師であった吉原治良も惜しみない賞賛をおくったらしい。後に彼らが創設する「具体美術協会」の理念にも通じる、人間と物質との激しい格闘の跡を見るような本作品は、数年後機関紙『具体』の創刊号を飾っている。

作家プロフィール

嶋本 昭三 SHIMAMOTO Shozo

1928-2013

作品情報

ジャンル絵画
材質・技法白ペンキ、鉛筆/新聞紙
寸法194×130.6cm
受入年度1981
受入区分購入
作品/資料番号1975-00-0238-000
TitleWork (Holes)
GenrePaintings
Material/techniquePaint (white), pencil on newspaper
Dimensions194×130.6cm
Acquisition date1981
Accession number1975-00-0238-000

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