1960
萩原英雄は、東京美術学校油画科を卒業し、それと同時に入社した高見沢木版社で、浮世絵などの日本の伝統的な木版の技法を記憶することになる。萩原はその後体調を崩し入院生活を送るが、その生活はそれまでの写実表現からより内的な表現を求めて抽象表現へと転換する契機を与え、また木版画の制作へ萩原を向かわせることになった。以来木版画の伝統を踏襲しつつ様々な新技法の開拓と追求により現代木版画の可能性を拡げてきたのである。第2回東京国際版画ビエンナーレ展で受賞した《石の花(赤)》、第5回リュブリアナ国際版画ビエンナーレで受賞した《白の幻想》は、紙の裏に滲み出る色や形を利用して、紙の両面より透明水彩絵具を何度も重ねて刷りこんだものであるが、紙のなかへ浸透した絵具は重厚ではなく透明感を感じさせる。さらに、新技法のきめこみや脱色の部分的な併用によって、型押しのような効果と滲みを遮断する鮮やかな白い線の効果を生み表面の風合いを豊かにしている。その後萩原の関心は《鎧へる人(20)》や《ささやかな記録(C)》にみられるように木版における線の表現の可能性の探究へと移行していった。そこでは凸版と凹版を使い、木版によって銅版よりも柔らかい線をつくりだした。こうした萩原の木版画における革新的技法の数々は1980年代、《三十六富士》で結実する。富士は、日本の伝統的な主題でありまた木版画の巨匠北斎が魅せられた山であり、そして萩原が見つめつづけてきた故郷の風景なのである。(A.T.)
1913-2007
ジャンル | 版画 |
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材質・技法 | 木版 |
寸法 | 86.8×58cm |
受入年度 | 1978 |
受入区分 | 購入 |
作品/資料番号 | 1975-00-7483-000 |
エディション | Ed. a.p.(画面外右下) |
Title | Stone Flowers (Red) |
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Genre | Prints |
Material/technique | Woodcut |
Dimensions | 86.8×58cm |
Acquisition date | 1978 |
Accession number | 1975-00-7483-000 |
Edition | Ed. a.p.(画面外右下) |