1949
抽象絵画から出発し、後には再び純粋な抽象へと至る朝妻治郎であるが、この時期は、主に人間、人体をモチーフにした具象性を帯びた作品を制作している。それは、戦前戦後を通じて抽象形態を追究し続けた斎藤義重が、戦後の一時期に人間をモチーフとする具象的表現を行ったこととも呼応させられよう。そこには戦争という人間の極限的現実とどう向き合うか、という問題に直面した画家たちの姿が浮き彫りにされている。この作品では、未来ある少年が傷を受け、手で顔を覆い、半開きの扉を示唆する部分を伴う明るい背景の前で机に肘をついている。背後から照らしだされる設定は、この時期の朝妻の多くの作品―例えば滝口修造が企画担当だったタケミヤ画廊での個展に出品された《祈り》(1950)や《逆光の少年像》(1951)―に用いられ、ある種の不安感を醸しだしている。しかし、画面には朝妻の特徴であるそこはかとないユーモアも漂い、希望と不安の共存するこの時代を映し出した作品となっている。(Y.W.)
1915-1980
1915 東京に生まれる
長谷川三郎,山口薫に師事する
1939 「自由美術協会第3回展」で初入選(40年に会員となる)
1951 個展(東京,タケミヤ画廊)
1952 モダンアート協会に参加,会員となる
1980 東京にて死去
ジャンル | 絵画 |
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材質・技法 | 油彩/カンヴァス |
寸法 | 89.5×72cm |
受入年度 | 1981 |
受入区分 | 購入 |
作品/資料番号 | 1975-00-0010-000 |
Title | Boy with a Bandaged Hand |
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Genre | Paintings |
Material/technique | Oil on canvas |
Dimensions | 89.5×72cm |
Acquisition date | 1981 |
Accession number | 1975-00-0010-000 |