1985
寄託(アサヒビール株式会社所蔵)
サム・フランシスは、戦後アメリカの抽象絵画を代表する画家の一人で、1950年代から約40年間にわたって精力的な活動を展開した。ここで取り上げた作品は、画家の晩年である1980年代に制作された大作で、1988年に日本国内を巡回した個展を機に日本にもたらされたものである。この時期の作品は、大きな白い地の上に、太いビーム(梁)や柱を思わせる構造体が大胆に配置された画面を特徴としている。サム・フランシスは、1970年代以降、床に広げたカンヴァスの上に、水を含ませたローラーを用いて水溶性のアクリル絵具を直接塗っていく、新しい技法を採用するようになった。ローラーで描かれる大きく単純な画面構造を基本に、アクリル絵具とたっぷりの水を用いながら、撥ねやにじみなどの偶然の効果が自由にアレンジされ、華やかで装飾的な要素が加わっている。心理学者C.G.ユングに傾倒していたサム・フランシスは、厳格なビーム構造と絵具の自由な氾濫というこの二つ要素を、意識と無意識になぞらえていたと言われる。画面の上で展開される奔放な色彩の饗宴は、まさに画家が無意識を解放させることによって実現されたものなのである。サム・フランシスは、しばしばアメリカ抽象表現主義の第二世代として分類される。しかしその絵画は、絵具の撥ねやにじみなどの偶然の効果や、大胆な白い余白の使用など、水墨画に代表される東洋絵画の美意識や技法を連想させる、ひじょうに独自なものであった。このため、本国アメリカよりもむしろヨーロッパや日本で高い評価を得ることとなった。(Y.M.)
ジャンル | 絵画 |
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材質・技法 | アクリル/カンヴァス |
受入年度 | 2001 |
受入区分 | 寄託 |
作品/資料番号 | 2001-98-0001-000 |
寄贈者名等 | 寄託(アサヒビール株式会社所蔵) |
Title | Untitled(SFP85-58) |
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Genre | Paintings |
Material/technique | Acrylic on canvas |
Acquisition date | 2001 |
Accession number | 2001-98-0001-000 |
Name of Donor etc. | Deposited (Collection of ASAHI BREWERIES, LTD.) |