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44の染体

伊藤 公象

1976

伊藤公象が土という自然の素材に無限の可能性を見出したのは1970年代に入ってからである。その制作方法は細かな粒子の集まりという素材の特質をよく活かしたもので、それはこの《44,染体》に端的に見ることができる。まず粘土をこねてから直方体に形を整える。それをチーズ切りでチーズを切るようにスライスして重ね、手を使って気の向くままに形を作り、焼成する。したがってどの個体も制作過程は同じであるが、結果的にはひとつとして同一のものはない。さらに、それらを床に並べて展示する際にも千差万別の組み合わせが考えられる。温度、水、圧力といった外的条件によって刻々と変わる土の表情が加熱されて固定化され、表情の違う個体の組み合わせからなるひとつの作品は二度と同じ姿で展示されることはない。伊藤は変化自在な土の粘性という特質を最大限に活かしつつ、陶芸の材料として古くから親しまれてきたこの普遍的な素材に新たな可能性を見出したのである。(M.S.)