c.1960
岡田謙三は東京美術学校在学中にパリに留学、4年余りに及ぶ滞仏生活を経て帰国し、エコール・デ・ボザール風の甘美な女性像やセザンヌを想起させる風景画などを発表する。二科展の中軸作家として活躍したにもかかわらず、再び海外に身を投じることを決意、1950年、48歳の時にニューヨークへと向かう。《ターニング・ポイント》は、渡米後、抽象に転じた岡田の典型的な作例である。ナイフを用いて塗り込められた白い絵具の層から、優美な線型が微かに姿を現し、微妙な拡がりと奥行きを持つ画面の中を浮遊する。日本の伝統的な料紙の模様と色を想わせるこの作風は「ユーゲニズム(幽玄主義)」と称され、ニューヨーク画壇において注目を浴びた。異国の日本趣味に迎合したと捉えられがちな岡田だが、そのような衣を纏いつつ、アクション・ペインティングにも似た奥行きのある堅固なマチエールの中に自らの心象を描いた点で、近代的な日本人画家であったといえよう。(K.T.)