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束の間の幻影

駒井 哲郎

1951

版画、特に銅版画の場合はどの技法を使用するかによって、その作品の印象は全く異なったものになる。黒から白への微妙な諧調を使用して作られたこの作品は、黒の背景の中に様々な形態が浮かび上がり浮遊している。目を閉じればこれらの形態は一瞬のうちに消え去るごとく儚いもののようにも見える。腐食の度合いによりその色調を変えることのできるアクアチントの技法は、面としての表現も可能であり、この作品においてはその技法が作者の意図を見事に伝えている。駒井は銅版画を日本に根付かせた功労者の一人であり、多様な技法を駆使して多くの優れた銅版画作品を残した。この初期の作品では、彼の「夢こそ現実であればよい」という夢見がちな面が強く、空中に浮遊する形態も何か玩具のようであり、ノスタルジックな気持ちを誘う。これら一群の夢をテーマとした作品の後、作者はビュランを使用した厳しい線による作品を発表し、一つの転機を迎えるのである。

作家プロフィール

駒井 哲郎 KOMAI Tetsuro

1920-1976

作品情報

ジャンル版画
材質・技法アクアチント、エッチング、ドライポイント
寸法18×29cm
受入年度1977
受入区分購入
作品/資料番号1975-00-6410-000
エディションEd. Ⅴ/Ⅹ(画面外左下)
TitleFugitive Vision
GenrePrints
Material/techniqueAquatint, etching, drypoint
Dimensions18×29cm
Acquisition date1977
Accession number1975-00-6410-000
EditionEd. Ⅴ/Ⅹ(画面外左下)

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