1986
2m4Ocm四方の大画面に、鮮やかな黄色のネクタリンが4個、描かれているのが、まず眼に入る。だが注意深く見ると、そのネクタリンの上に君臨するように、真っ黒な楕円形の形象が置かれているのが見えてくる。これが、「卵」である。艶のないタールの黒い塊で表されたそれは、画面の中央に切り抜かれた深い空虚な穴のようにも見える。この絵画においては、このように色と形の前後や上下の位置関係は、暖味なままに投げ出されている。一方、果物の現実の大きさと比べて法外なスケール感は、描写としてのリアリティを喪失させてしまう。最初、果物を描いた「静物画」と思われたものが、ひじょうに抽象的な画面にも見えてくるのである。ドナルド・サルタンは、新聞から取った事件の写真、過去の名画(マネなど)、静物を写したポラロイド写真などをモティーフに、ハードボード、リノリウム・タイル、タールなどの工業素材を用いる全く独自の技法によって、類のない絵画を作りだした。それは、(例えば「静物画」といったような)絵画の伝統を取り上げながらその解体をも体現するものであり、1980年代のアメリカ絵画の成果の一つに数えられる。(Y.M.)
1951-
ジャンル | 絵画 |
---|---|
材質・技法 | 油彩、タール/ビニールタイル、メゾナイト |
寸法 | 249.5×247cm |
受入年度 | 1992 |
受入区分 | 購入 |
作品/資料番号 | 1992-00-0047-000 |
コピーライト | © 2024 Donald Sultan/ ARS, New York/ JASPAR, Tokyo E5461 |
Title | 4 Nectarines and an Egg |
---|---|
Genre | Paintings |
Material/technique | Oil, tar on vinyl tile, masonite |
Dimensions | 249.5×247cm |
Acquisition date | 1992 |
Accession number | 1992-00-0047-000 |
Copyright | © 2024 Donald Sultan/ ARS, New York/ JASPAR, Tokyo E5461 |