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実験報告

横尾 忠則

1996

横尾忠則は、1960年代から日本を代表するグラフィック・デザイナーとして活躍を続けるかたわら、並行して絵画の制作をおこなってきた。《花嫁》は、1966年に南天子画廊で最初の絵画による個展を開催した際に出品されたもので、野卑なエネルギーに満ちたピンク色の女性たちの連作の一点である。グラフィック・デザインの仕事とも共通する、土着性や通俗性を強調した特有の反モダニズムが目を惹く1996年の《実験報告》に描かれているのは、横尾が好んで取り上げる江戸川乱歩的な少年冒険小説の世界である。ヌードから戦闘機まで、並置された種々雑多なモティーフは、少年少女向けの図鑑を連想させるナンバリングによって画面に統合されている。2001年に始められた「Y宇路」連作は、三叉路の夜景をモティーフとしたもので、観客一人一人の、心に潜む「分かれ道」の記憶を喚起する作用を持っている。なカでも《意志の彷徨》は、鉄道のガード下をモティーフにしており、古いギャング映画を思わせるような物語の予感に満ちている。渦を巻くような構図も、観客を絵の中に引きずり込む役割を果たしていよう。横尾の絵画のスタイルと主題は、時代によってめまぐるしく変転を重ねており、描出される対象も森羅万象に及ぶ。様々な源泉から引用した事物を画面の上でコラージュ的に接合し、自己の物語と重ね合わせていくその絵画は、モダニズムの求心的な追求とはまったく対照的であると言えよう。横尾の絵画にあって何よりも魅力的なのは、未知なる物語を「絵のように」描き出すという、絵画の原初的な力を感じ取ることができる点ではないだろうか。(Y.M.)

作家プロフィール

横尾 忠則 YOKOO Tadanori

1936-

作品情報

ジャンル絵画
材質・技法油彩/カンヴァス
寸法194×194cm
受入年度1996
受入区分購入
作品/資料番号1996-00-0007-000
備考1横尾忠則は、1960年代から日本を代表するグラフィック・デザイナーとして活躍を続けるかたわら、並行して絵画の制作をおこなってきた。《花嫁》は、1966年に南天子画廊で最初の絵画による個展を開催した際に出品されたもので、野卑なエネルギーに満ちたピンク色の女性たちの連作の一点である。グラフィック・デザインの仕事とも共通する、土着性や通俗性を強調した特有の反モダニズムが目を惹く1996年の《実験報告》に描かれているのは、横尾が好んで取り上げる江戸川乱歩的な少年冒険小説の世界である。ヌードから戦闘機まで、並置された種々雑多なモティーフは、少年少女向けの図鑑を連想させるナンバリングによって画面に統合されている。2001年に始められた「Y宇路」連作は、三叉路の夜景をモティーフとしたもので、観客一人一人の、心に潜む「分かれ道」の記憶を喚起する作用を持っている。なカでも《意志の彷徨》は、鉄道のガード下をモティーフにしており、古いギャング映画を思わせるような物語の予感に満ちている。渦を巻くような構図も、観客を絵の中に引きずり込む役割を果たしていよう。横尾の絵画のスタイルと主題は、時代によってめまぐるしく変転を重ねており、描出される対象も森羅万象に及ぶ。様々な源泉から引用した事物を画面の上でコラージュ的に接合し、自己の物語と重ね合わせていくその絵画は、モダニズムの求心的な追求とはまったく対照的であると言えよう。横尾の絵画にあって何よりも魅力的なのは、未知なる物語を「絵のように」描き出すという、絵画の原初的な力を感じ取ることができる点ではないだろうか。(Y.M.)
TitleExperimental Report
GenrePaintings
Material/techniqueOil on canvas
Dimensions194×194cm
Acquisition date1996
Accession number1996-00-0007-000

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